風と君を待つだけ

~my ordinary days vol.3~




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一途に。 :: 2013/05/26(Sun)

 iPhoneを紛失した。
 まだ、一年と少ししか使っていなかったのに。

初夏1 先週、思うところあって、夕刻から夜にかけて日々「歩く」ことに励んでいた。Odaさん風に言えば「根性」のために。真横を駆け抜けてゆく足取りの軽いランナーの背中が眩しかったけれど、急に走ると、もう翌日は歩くこともままならぬ体力しか今の自分にはないだろう。それでも、iPhoneアプリで計測して9キロ以上の距離を、日々、てくてくと歩いていた。今思えば、駆られたように一途に歩いていた。

 「一途」である方法や対象は、ほかにも幾らもあった筈だけれど、とにかく懸命に歩いていた。その間に、そうなることは初めから決まっていたかのように、忽然と「彼女」は姿を消した。折り返し地点で、彼女が画面上のアプリで示していた「55分」を見つめたのが最後の別離であった。
 彼女は警察にも届かず、検索機能にもひっかからなかった。翌日の朝、早々に開通を止めた。
 以前から、幾つか不具合な現象が増え続けていた。イヤホンジャックにイヤホンが入らない、入力切り替えが、どうやっても速度が上がらない。挙げ句、アラームは、かけた2分前に鳴り始めていた。これほど具合の悪さを訴えているのに病院(アップルストア)にも連れてゆかずに、だましだまし使ってやろうとしていた私に愛想を尽かしても無理はない。

初夏2 そんなこんなで最新機種を手にすることになってしまった。この後、また面倒が待っていたが、新しいものは何につけて気持ちはよい。偶然にも、先日注文していたApple TVも届いた週末。
 それにしても、手持ちの様々な機器はどれも宝の持ち腐れだ。持っている能力の数パーセントしか発揮させていない。彼らを使いこなせれば、もっと暮らしが彩られることだろう。一方、モノが増える度に(モノだけではないかもしれない)自分の管理を超えたシンプルな暮らしから遠ざかっていくような気持ちにもなる。ちょっと新しいことにはトキめいたほうがいい。回避しようとする志向性も相変わらず強い。彼女が行方を眩ませたことは、災いを福にするまで、まぁ、頑張りたまえという事なのかもしれない。増え続けるケーブルの類にさえ、うんざりしても。
 コンディションが少しずつ戻るなか、絡まってしまった糸はもうそのままに。そこから、僅かにでもくぐり抜けてでも前にゆこう。そうした気持ちを求めて、ただ淡々と当面は歩こう。

 折しも、OdaさんがソニーのCMのために書き下ろした楽曲が、今夜限りフルバージョンで聴けるというので珍しく用意周到にテレビ前で待つ。キャッチフレーズは『この国の本能は、美しいに、一途だ』
 美しい映像と共にシンプルで、祈りのようにも聞こえる歌声が届いた。すっと。心を研ぎ澄まさせるような。息を止めて聴いた。

 「君がいるから・・・」

 隣人のこと、遠くに暮らす人のこと、思い出すな。 

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