風と君を待つだけ

~my ordinary days vol.3~




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ひとこと申し上げまする。 :: 2012/07/05(Thu)

 九時過ぎに仕事を切り上げて、学内のバス停に向かった。3つ並んでいるなかの手前二つには男子学生がそれぞれが座り、お喋りに興じている。その奥のベンチには、停車したバスの前で運転手が座っており、たいそう伸びやかに煙草を吹かしていた。発車時刻までの時間をつぶしているのだろう。
 
 学内で煙草が吸える箇所は決められている。バス停は明らかに禁煙の筈だし、学生や教職員が吸っている姿も見たことがない。時折、地面に吸い殻を見かけるのはなぜだろうと思っていた。

 できるだけ距離を持って座り、男を遠くから凝視した。ケータイを片手でいじりながら、深々と煙を吸い込むとぱーっと白いものを思い切りはき出す。闇夜に白い煙が一層、際だって害的に感じられた。
 注意しようか、どうしようか。という気持ちが沸いてくる。彼は、その場所が煙草を吸うのに相応しくないことを知らないでいるのか、あるいは確信犯なのか。
 
 見たところ40代から50代くらいの男性だろうか。願わくは、この強い疑惑の視線を感じ取って煙草をやめてはくれないかと祈った。彼はちらりと私に目をやった。明らかに見つめられている様子を察したようだ。さぁ、どうするだろう。嫌だな、きっとあの右手の指に挟まれている吸い殻を、男はベンチの下に捨てるに違いない。
 
 でも、万が一、彼が吸い殻を捨てずに、自分専用の灰皿にしまってくれたら黙っていようと思った。彼は、もう一度、ちらっと私を見ると、吸い殻を右手に持ったまま立ち上がって、バスの運転席に戻ろうとした・・・あ、もしかするとバスに灰皿を持っているのかな。だが、ステップに右足を置いたその瞬間、彼が、とてもさりげなく右手から吸い殻をぽとりと落とすのを見てしまった。
 
 気づいたらもう走り出していた。「運転手さん!恐れ入ります。私は、この大学の教員です。今、こちらに吸い殻を落とされましたね?」
 フォーマルで中庸な声で、そう言うと、吸い殻を指さした。そのときの私は赤い長靴を履き、淡いピンク色のベレー帽を被っていて、まったく権威性のかけらもない格好だったが、例え相手がどのような態度を取っても、非を指摘する気持ちは覆すつもりはなかった。
 
 彼は、「あ、すみません!」と言って頭を下げ、なぜか、奇妙な笑顔を作ってステップを降りてくると、あっという間に吸い殻を拾ってゴミ箱に捨てに走った。その顔つきは、まるで学生くらいに幼く見えた。あ、バレたか、と思ったのだろうか。
 後ろ姿が見えたが、黒いズボンから白いシャツが半分くらいはみだしていた。そんな彼にもう一声、「こちらは禁煙ですよ。ご協力を願います」と言った。そのとき、両足をそろえた剣道式礼をキメてからその目を真っ直ぐに見た。彼はさらに笑顔のまま、何度も頭をさげてバスに戻った。
 
 ベンチに戻ってバッグからお茶を取り出してぐびりと飲んだ。ふっと隣を見ると、一連の出来事を目の当たりにした男子学生達があっけに取られてこっちを見ていた。「ごめんね、びっくりした?」と声をかけたら「あ、いや、ちょっとだけ・・・」。「吸わないでね、ここでは。ね?」と出来るだけ優しく言うと、両手をぶんぶん振って「ボク、吸わないっすよ!!煙草自体、吸いません!」と否定した。

 あの運転手が犯した一瞬のマナー違反としての罪の重さと、この不完全な日々、私が積み上げている罪の重さを比較すれば、もしかすると私のほうが重い可能性だってある。ふと、自問した。不完全な人間が、勤労青年の些末な罪を指摘して戒めるのはどうなのだ?
 しかし、私には彼自身を貶めたいような気持ちは微塵もなかったのだ。
 
誕生日にお花を貰った。 このまちに暮らし始めた頃、信じがたいことに吸わない人の権利は全くなかった。そんな「時代」と、抑圧を受けているのに「言い出せなかった」自分の若き時代を十分過ぎるほどに超えて大人になり(おばちゃんになり)やっとアサーティブに意見を主張できることを、はっきりと知りたかっただけだ。
 
 横暴な態度を取らなかったシャツをイン出来ていない運転手氏には少し感謝している。


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Megさん、こんばんわ。お久しぶりです。

タバコの話は時々話題に上りますが、それだけまだ喫煙のマナーが行き渡っていないということなのでしょうね。
僕も以前吸っていましたし、そのときにポイ捨てを一度もやったことがない!とは言えないのでアレですが、でもやはりポイ捨ては酷くカッコ悪い行為ですよね。
例えば、歩きながらパンを食べてて、食べ終わると同時にそのパンの袋を道に捨てるのと同じなわけで、いい大人がすることではありません。いい大人ではない大人でもしちゃいけないんだけれど(笑)

禁煙場所での喫煙もそうですね。
僕の住んでいる三島市は歩きタバコは条例で禁止されていて、駅にはそういう横断幕も掲示されているのですが、未だにそういう人を見かけます。
煙いし臭いしポイ捨てするだろうし、彼らはきっと「そんな条例知らないし、知ってても俺にはカンケー無い」と思っているのでしょう。
警察が取り締まるわけでもないので、痛くも痒くも無いのでしょうね。

それにしても、Megさんは今回はハッキリとその運転手に伝えたのですね。その運転手、自分でもそれが悪いことだと認識していたのはせめてもの救いでしたね。
運転手が逆切れしなくてよかったですが、だけど、周りに他の誰もいないときは十分に気をつけてくださいね。何かあってからでは遅いですからね。


  1. 2012/07/06(Fri) 21:12:52 |
  2. URL |
  3. akasaka #r5rhURPY
  4. [ 編集 ]

akasakaさん、こんばんは!

お久しぶりですね。
体調も安定して来られたようで何よりです(^-^)

煙草をテーマにした記事はそう言えば散々、書いてきましたね。
私の微力過ぎるタタカイの記録として(笑)

しかし、一昔前に比べたら大分、生きやすい世の中になりました。
少なくともいきなり目前で断りもなく煙草を吸い出すような人には
出会いにくくなりましたし、何よりも、そうした行為者に対して
遠慮して欲しいとお願いすることは躊躇いを伴わなくなりました。

とは言え、ポイ捨てする人がいなくなる世の中になるには
まだまだ当分時間がかかることかもしれないですね。
もし私が念力だけで目からビーム光線が出せたら
そんな人達の後頭部を目掛けてチリチリっと(笑)

私が声をかけた運転手は確かに見つめられている時から
よくない行為をしている自覚はあったんでしょうね。
確かに逆ギレなんてされたら厄介でした。
何だか根拠のない自信で、その時は伝えることができるはずだと
思ったのですが、今後は気をつけます(-。-;

でも、案外言っちゃうんだろうなぁ。
公共の場所で騒ぐ子どもにも昔から注意もしますしね。
なーんだろ、自分で思っているよりずっとおばちゃんなんですね。
いや、でもお節介おばちゃんは社会にいたほうがいいですよね?(笑)
  1. 2012/07/07(Sat) 21:48:11 |
  2. URL |
  3. Meg #T0ca3UNU
  4. [ 編集 ]

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