風と君を待つだけ

~my ordinary days vol.3~




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しあわせしごと。 :: 2012/09/08(Sat)

 先日、自宅前にタクシーを呼んだ。さして待つことなく目前でスマートに停車した車から顔を出した運転手の仕事ぶりが記憶からずっと離れない。
 彼は温厚そうな笑顔を向けて「お待たせ致しました」と言った。私が手にしていたキャリーバッグを見つけると「トランクに積みましょうか?」と声をかけてきた。「あ、はい。お願いします」
 
 すみやかな身のこなしで車から下りてくると、両手で大切そうに荷物を持ち上げた。トランクを開くと「こちらに、この向きで置かせて頂きますね」と私にわざわざ声をかけ、そっと置いたのだ。トランク内は見事に何も置いておらず、きわめて整然としていた。その時点で「このひと、何だか違う」と感じていた。

 後ろ座席に乗り込む。なぜかいつもより座席が広々して感じられる。何故だろうか?いつもの小型タクシーの空間面積が変わる筈もないのに乗り心地が明らかに違う。隅々まで掃除が行き届いているクリーンな空間だったからか。呼吸がしやすいと言えばいいのか。
 駅までと伝えて間もなく「冷房は寒すぎませんか?少々おおきな音がして申し訳ないですね」と運転手が笑顔のまま詫びた。私は車の心地が良い理由について考えこんでいたし、エアコンの音は全く気になっていなかったが、タクシー利用者には、からだや心が弱っている人も多いと思う。一番の弱者を気遣う接客は普遍性を持つのだろう。
 
 駅には10分もかからずに到着する。身体に一切の衝撃を与えず静かに停車。こちらがお札を置いた瞬間に、機敏な身のこなしできちんと揃えた100円玉を4枚、手に平にそっと置いてくれた。「左手で失礼します」と言われるまで、彼が左右どちらの手をさし出したのは気づかなかった。
 彼はお客のためにドアを開けると、すぐさま運転席から出てトランクのほうに小走りで向かった。こちらが財布をショルダーバッグに仕舞い、肩にかけ直し終わるや否や、また赤ん坊のように愛おしげに抱えられたキャリーバッグが手渡された。荷物の底は片手で支え、持ち手は私の右手近くに差し出された。
 
 「ありがとうございました」。
 このドライバー氏の接客の「究め方」にほとんど感嘆の念を抱きながら、当然ながらお礼にも心を込めずにはいられない。車内の清掃や最大限の気遣いに配慮。そのなかでも、とくにお客にとって最も居心地がよい「リズム感」。それを養うべく日頃から相当の研究をしていないと、あんな風ではいられないと思う。
 会ってから1分で感じられるお客の呼吸やリズム感を、感性をとぎすませて見極める。だから、きっと無駄な動きがない。何より一番素敵だと思ったことは、無駄はなくても「急かされる」感じも一切ない。寄り添いましょう、あなたの歩幅に。まるで優秀な支援者のよう。

 甲斐甲斐しく、工夫をこらして丁寧に自分の仕事をしているひとは、とても幸福そう。 

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comment

Megさん、こんばんは。

常にタクシーに対しては誰よりも厳しい目を持つMegさんには珍しくベタ褒めな記事ですね!
それほどまでに、この運転手氏の態度や接客サービスがこの上なく立派で、Megさんにとっての理想に近いものだったのでしょうね。

この運転手は初めての人だったのですか?いつも来てもらうタクシー会社なんですか?
というか、「いつも」タクシーに来てもらっているのですか?(笑)

それはともかく、運転というのはそれ自体は習えば誰でも出来ると思いますが、同乗者を不快にさせない運転というのは実は簡単ではないんですよ。
まず第一に、スピード感というのが個人で違いますよね。遅すぎるとか速すぎるとかは主観でしかありませんし、いつもはゆっくりでいい人でもその時だけは、たとえば遅刻しそうとかで速く走って欲しいと願っているかも知れませんし。

スピードを出せばそれだけ加速やブレーキ、カーブなどで必要以上に身体が揺さぶられます。
しかしながら、本当に運転の上手な人は速く走っていること自体を同乗者に悟られないぐらい安定して走れますし、スピードは遅くても乱暴な運転だとそれだけで心身共に不快ですよね。

そういうテクニックに関してもそうですが、要は気配りが出来ているかどうかだけでも大きく印象は違ってきますね。
今回のMegさんの体験は、その運転手氏にそれら全てが備わっているからこそのものだったのでしょう。

タクシードライバーぐらいしか就ける仕事が無かったのか、それとも誇りを持ってその仕事に就いているのか、の違いなのでしょう。
Megさんの住む地域でもそういうドライバーばかりになってくれるといいですね。
  1. 2012/09/10(Mon) 21:34:02 |
  2. URL |
  3. akasaka #r5rhURPY
  4. [ 編集 ]

akasakaさん、こんばんは^^

コメントありがとうございます!

タクシー運転手の悪態度に、
さらに私が悪態付くという記事は過去にさんざんアップしてきましたので、
この記事では、努めて麗しい事実だけを述べ、
「過去、数々の苦々しい経験」は封印しました。
それらを比較したりすることも、もはや、失礼な気さえして(笑)

最近はこれでもタクシー利用は激減したと思っています。
(めぐめぐリサーチセンター比:笑)
先日は夜が遅めだったことと、今指を痛めてしまったこともあって
とにかく荷物という荷物が持ちづらいんですね。
それで、先日は久しぶりに来て貰いましたよ。

いつも自宅前に呼ぶときは「A社とB社」と決めている2社があります。
A社はもはやお迎えに来る運転手の顔ぶれが決まってきており、
時々運賃をおまけしてくれます。
ただし、電話予約する際の接客は今ひとつです。

B社のほうは全体的に評判のよい会社ですが、
フォーマルな印象はあるものの、何となく柔軟性は欠く気がしていました。
柔軟性というのは「実は今日はめっちゃ急いでいるので
安全運転かつ急いでくだされー」というかなり勝手な事情のときに
いかに察してくださるか、といったようなことです。

最近は予約した際には、すっ飛んでくるのがそのB社のほうですね。

で、我が町でひょっとして「あれは幻か幻覚だったのでは?」と思えるほど
紳士的なドライバーさんはそのB社の人でしたね。
初めて乗ったと思います。もし、指名できるならば、したいくらいです(笑)

>同乗者を不快にさせない運転というのは実は簡単ではないんですよ。

でしょうね・・・。
運転をしない私にもそれは分る気がします。
私の父は、残念なことに昔から運転が上手ではありません。
ブレーキをかけると必ずがくんと体に衝撃が走るのです。

私は車酔いが激しいのだと子どもの頃は思っていましたが、
ひょっとしたら父の車酔いに特化していたのかも(苦笑)

>要は気配りが出来ているかどうかだけでも大きく印象は違ってきますね。

うんうん、きっと「何事もそう」なのでしょうね。
エンドユーザーと言いますか、最終利益享受者を
サービス業であっても誰と考えて行動をするか、によってぜーんぜん違ったものになると思います。

まさに、この人はタクシードライバーの仕事に誇りを持って就いていると感じました!
だって、何だか楽しそうでさえあったのです。
車の運転をする以上の何かを、仕事で刻もうとしていると思いました。
働くってそうありたいなと思いました。

ところで、akasakaさんもお車を運転されますよね。
いったい、どんなドライバーなのでしょうか??とても興味深いです!
  1. 2012/09/10(Mon) 22:18:49 |
  2. URL |
  3. Meg #T0ca3UNU
  4. [ 編集 ]

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