風と君を待つだけ

~my ordinary days vol.3~




スポンサーサイト :: --/--/--(--)

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


  1. スポンサー広告

鏡を磨く。 :: 2013/04/17(Wed)

 これは、少し前の話なので読まれた方はどうかご心配なく。

 私が「くたばっていた」時に「休め」と診断書を書いてくれた主治医は、昔はスポーツをやっていたような大柄な身体つきで、割と豪快できっぱりとした話し方をする男性だ。こちらでつとめはじめて二年目くらいに一度目の危機があって以来、私は彼の患者である。
 基本的に普段は調子はどう?と聞いたあとは、軽い雑談をして、必要な薬をぱっと処方してくれる。私にとってはありがたく、面倒くさくない人だ。彼にとっての私は、「近頃の学生」だの「近頃の若い患者さんの傾向」だのを守秘義務に抵触しない程度にできる「ほとんど手がかからない方の患者」の一人だった筈だ。
 
 ところが、私自身が最もよろしくないときに、できれば主治医のいる病院には行かずに済ませたいと願いながらも薬だけは処方してほしくて這うように行ったのだ。呼ばれて椅子に座って一瞬。もう全てを悟られたことだろうと思う。普段、クールな印象すらある彼がすこしショックを受けたような悲しげな顔になった。が、職業上の苦笑いをつくりなおし、「まっ、あんまり無理せんとってくださいよ。」と言った。「まっ」のあとは吐息に聞こえなくもなかったが、とにかく短い面談だった。

 長く診てきた患者が悪化するとか、一向に良くならないなどは医師としては日常茶飯事の出来事だろう。帰り道、ふらふら歩きながら「あんな先生の顔、はじめて見たなぁ」と思った。ほとんど泣き笑いみたいに見えたくらいだ。
 
 あれから、しばらくして私は分った。あのとき、私があんな顔をしていたんだと。

====================================
 
 授業がはじまった。
 幸いにしてそのことは私の緊張感を高めるものではなかった。反対にマンネリを感じさせるものでもなかった。いつものように新年度を迎えた学生たちがそこには居て、私は必要な分だけねじを巻いた。肩に余分チカラは入っていなかった。だって、できることしかできぬのだ。
 
 「さて、どうして盛り上げようかな」と自然に考え及んでいた。昨年度の後期に私の別の講義を受講してくれていた数名の学生の顔に期待を感じ取った。休学を経て復帰した学生の顔には、「この人は信頼に値するか、自分はこれから上手くやれるか」という不安を感じ取った。最近増えてきた留学生たちには、ちょっと独特の授業方法への戸惑いも感じた。私は経験の限りに頭と心と体を使ってみた。場はやがて私の期待する温度に十分に温まってゆくのがわかった。

 それは一瞬のワクワク感にも似ていると言ってよいのではないか。当然、努力のいるワクワク感だ。得手不得手を別にすれば、私は画策することがどうやら好きだ。異質だけれど尊重できる、というよい空気を創り出す役割を担い、学びを通じて彼らをエンパワメンできれば幸福だ。
 
 講義を終えて教室を出て行く学生たちの砕けた顔をみたときに思った。彼れは私を照らす。そして試練もくれるが、挑戦をさせてくれる人たちだ。学生たちとの相互作用はちょっと面白い。時差もあるのだ。この話はまた。
サクラが咲いている時期はたいていまだまだ寒くて、薄着の上にはコートが欠かせない。

 

  1. 未分類
  2. | comment:0
<<パープルがかった濃いブルー。 | top | 葛藤のあとからはじめよう。>>


comment

comment


管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。