風と君を待つだけ

~my ordinary days vol.3~




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キレる女。 :: 2009/11/16(Mon)

 朝のバス通勤。隣に座った男子学生がi-podを聞いている。それ自体は構わないが、ドラムやシンバルの耳障りな音漏れがもう尋常ではない。しかも、常にゆらゆらと体を動かしたり、足踏みしたりと、完璧なトランス状態である。一瞬その音量にぎょっとしたが、そのときに「喧しいから少し音を小さくして」と願えばよかったかもしれない。
 私が「出来れば察せよ」という態度を終始取ったのは、大きな間違いだったと思う。最初は、おもむろに日頃から持参している耳栓を取り出し、彼の目に触れるように耳に差し込んだりした。さりとて、真横から漏れてくる音にはたいした効果がない。次に、狂ったような音を立てている存在の方向に真っ直ぐ向いて、おおよそ5分以上、その表情が全く無いように見えて来る横顔と、手元に握りしめられているi-podを交互に凝視し続けてみた。まさか、この私の異様な態度に気づかない訳はないとは思ったが、驚くことに彼が音量を下げる様子は一切ない。
 最後の手段として、私は大げさに両手で耳をふさいで見せた。隣の女が「あんたの音、あまりに耳障り!」と言葉なく訴えている。しかし、当人は、その様子を意に介する様子がない。私の馬鹿みたいな一人芝居に、シャカ男の呆れるほどの無関心ぶりは周囲から見ていても相当、奇異に映ったことだろう。
 
 私は、公共マナーという観点からその学生を諭そうなどと思うのことはやめた。おそらく言っても解らないだろう。私は、バス停に着いた瞬間に真っ先に立ち上がったが、瞬間に思い直し、くるりと振り返るなり、男の耳からイヤホンをすぱっと抜き取った。そのとき、「あぁ、剣道をやっていてよかった」と思った。理性よりも、心よりも、何より先に体が動いたといった感じだ。
 そのとき、私は一体どんな顔をしていただろうか。彼はふいを付かれ、明らかに怯えきった表情をこちらに向けた。これまでの「横柄」を通り越した態度と、目の前であまりに狼狽している幼さを見て、私の気持ちはすっと冷めた。それでも、ただ一言、低い声で「君のその音、ものすごくうるさいっ」とまっすぐに彼の目を見つめて言い放った。彼は心臓を射抜かれたように呆然としていた。謝罪なのか、わかったという意味なのか判別はつかないが、僅かにコクンと頷いた。それほど放心するようなことか。どうして、そこまで他人に無関心でいられるのか。

 バスを降りたら、後ろは全く振り向かず、研究室に足早に向かった。心はもう次の講義のほうに向いていた。今、一番キレやすいのは若者よりも働きざかりでストレスも最も多い中高年層らしい。
 彼が次に朝のバスに乗るときに、再び同じ音量で音楽を聴き続けるのか、少しは周囲のことを考えて行動するようになるのか、誰もわからない。 

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> 理性よりも、心よりも、何より先に体が動いたといった感じだ。

 この感覚、とても大事だと思う。心よりも頭よりも先に身体が動くことって、ぜったい間違いを起こさないからね。剣道のおかげ?そうかもね。いちいち小手を取りに行こう、とか胴きまるかな? なんて思ったり考えたりしてから身体を動かすようじゃ、みんな相手にばれちゃうもんな。
 公共マナーの守れないやつに実力行使する(注意する)なんて、当たり前といえば当たり前のはずなんだが、できない。いろいろと言い訳を考えて、結局見て見ぬふりをしてしまう。だから男の耳からスパッとイヤホンを取り外すなんていう男前なことができるめーちゃんに、今すんごい「尊敬の念」を持ってしまう。彼がまた同じようなことをしているか、考えを改めるかなんてことは、忘れてしまおう。わからないもの。
爽快にキレる女に、今後も期待!
  1. 2009/11/17(Tue) 03:23:50 |
  2. URL |
  3. た #-
  4. [ 編集 ]

せがたく、最後のお返事です。

>心よりも頭よりも先に身体が動くことって、ぜったい間違いを起こさないからね。剣道のおかげ?

うん。なんと表現していいか分からないけれど「反射的行為」だとは思ったよ。間違いなのか正しいのかは別として、私としては、くるっと振り返った瞬間、すぱっと「コテ」を決めたような気分だったから(笑)

>公共マナーの守れないやつに実力行使する(注意する)なんて、当たり前といえば当たり前のはずなんだが、できない。

私も通常なら出来ないのよ。それが例え子どもであっても何と言うべきか悩んだ末、嫌な気持ちのまま何も言わないことが多い。相手がどんな人なのか分からなければ尚更のことで、こちらに危害が加わる可能性も無視できない。

>だから男の耳からスパッとイヤホンを取り外すなんていう男前なことができるめーちゃんに、今すんごい「尊敬の念」を持ってしまう。

それはどうもありがとう(笑)少なくとも直接的関与がなくても、我が大学の学生であるという認識が私の行為を大きく助けたのでしょう。音漏れに苛立っている最中は、「私は○○学部の教員だけれど・・・」とか名乗った上で注意しようか、とも考えたの。でも、反射的行為のあとに出たのは「うるさいっ!」という怒りの伝授だったわけ。だから、教育的立場だとか後付けは出来るけれど、一人の人間として「怒っている」という感情を伝えたに過ぎないのよ。

でもさ、今回に限っては、きっぱりと言えてよかったと思っているよ。
  1. 2009/11/17(Tue) 23:43:29 |
  2. URL |
  3. Meg #T0ca3UNU
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